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木々の響き

旭川方面のコンサートに出かけて、思わぬ時間をいただきました。それは宿泊したメゾンドキミコでの出来事でした。へとへとに疲れて、たっぷり眠るはずでしたが、夜明けを待たずに鳴き始めたニワトリの雄たけびで目が覚めました。強烈な鳴き声を何度も数え始めてしまい、なかなか眠れない...。どうしてあんなに鳴き続けるのだろう..何か言いたいことでもあるのかな~などと頭が働きだして、ますます眠れない..。

 そのうち、ニワトリの鳴き声で目覚めていた頃のことを思い出したり..ぼんやりした意識のまま朝を迎えました。夜中に到着したので周囲の様子は分かりませんでしたが、うっすら靄がかかった木々のシルエットが周囲を取り囲んでいました。

 ニワトリの鳴き声は終わり、朝食前にほんの少しの散歩時間。短いクルミのラブフルートを持ってゆるりゆるりと歩きました。大きなトドマツのところで足が止まり、なんとなく吹いてみようかな..と思いました。KOCOMATSUのトドマツより長く生きてきたのはひと目でわかりました。根元に少し病気になりかかったところがあり、時の流れを感じました。

 すぐ近くの別のマツは背丈くらいのところでぼっきり折れていましたが、残された幹の一部から養分をもらって真横に成長していました。背中が折れてしまっても、へこたれずに生きる術を持っているのでした。
やがて、そこから種が落ちて、新しい木々が生まれるのでしょう。

 吹き始めた場所は、なんとなく立ち止まったところでしたが、そこには思いもよらぬ響きが待っていました。数十本の木立とその空間に、短く細身のクルミラブフルートの少し高めの音色が響き渡ったのです。天然の残響の美しさにびっくりでした。言葉にならない、柔らかくて、ゆったりして、何とも言えない響きにうっとりでした。

 おそらくほんの少しでも位置が違っていれば、それは起こらなかったでしょう。こんなことがあってもいいのだろうか..。木と木が呼び交わし、ちびのクルミの響きを受け取り、友に伝えて、さらに次の響きになって空間を満たしていく様子が見えているような錯覚さえおこりました。

 空気も靄も木立ちもクルミの響きと繋がって、なんとも穏やかで、心地よく、嬉しい時間でした。これに加えて、あのニワトリのたちが、思い出したように鳴き始めました。こっちの声だって素敵なんだよ~とアピールしていました。思わず苦笑です。

 KOCOMATSUの響きも心地よいのですが、自然の中の素敵な共鳴には脱帽です。心底心地よいと感じる瞬間をプレゼントしていただきました。あの瞬間だからこそ生まれた響き。きっとまた、思いがけないところで、違った形で受け取れるのかもしれません...。
by ravenono | 2010-09-14 10:17 | 響きあう
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